LINEヤフーが2026年4月に提供を開始したAIエージェント「Agent i」が、数百万人規模の利用者を獲得している。LINEアプリとYahoo! JAPANアプリの双方から利用できる同サービスは、自社データベースとの連携を強みとして他社との差別化を図る。ポッドキャスト「石川温のスマホNo.1メディア」では、LINEヤフー株式会社 上級執行役員・AI Agent統括SBUリードの葭沢光伸氏が、サービスの概要から今後のビジネスモデルの課題まで詳細に語った。
LINEとYahoo! JAPANの両方から起動できる設計
Agent iはYahoo! JAPANのホーム画面の検索窓横にあるアイコン、またはLINEアプリのホーム画面上のアイコンをタップするだけで起動する。テキスト入力が必須ではなく、用意された領域別エージェントをタップするだけで利用できる設計となっており、葭沢氏は「どんな風にAIに相談するかということに関して、タッチするだけでさまざまなサポートができるサービス」と説明した。
LINEのトークルームからも利用できる点が特徴で、テキスト入力欄の下にAgent iのアイコンが表示される。現時点では「返信を提案」「話題を提案」「ムードを分析」の3機能が用意されており、葭沢氏によれば「返信を提案機能はリリース後、多くの方にご利用いただけている」という。
自社データベースとの連携が最大の差別化ポイント
Agent iの強みとして葭沢氏が繰り返し強調したのが、LINEヤフーが保有するデータベースとの連携だ。「LINEヤフーが保有しているさまざまなデータベースを接続して、そこからより正確に情報を返却するようにコンセプトとして設計している」と述べ、一般的なAIに比べてより正確でリッチな回答が得られると説明した。
具体例として挙げたのがショッピングとYahoo!ファイナンスだ。ショッピングでは「お買い物エージェント」を起動し、イヤホンを探す場合であれば、利用シーン・音質・価格・バッテリーといった要素をAIが順番に質問しながら絞り込んでいく。「実際のお店に行くと店員さんとの会話から始まることも多いと思うが、それと同じ体験をAIが提供できる」と葭沢氏は語った。
Yahoo!ファイナンスとの連携では、ユーザーが登録した投資ポートフォリオをエージェントが参照し、「本来自分でやらなければいけなかった、どんな理想的なポートフォリオに組み替えるべきかの分析をエージェントが代わりに実行してくれる」という活用が可能になるという。
LINEの公式アカウント経由でビジネス利用にも展開
個人向けにとどまらず、法人・店舗向けの活用にも大きな可能性があると葭沢氏は強調した。LINEの公式アカウント(オフィシャルアカウント)をAgent iによって「エージェンティックに進化させる」方向で開発が進んでいる。
具体的には、予約受付の自動化や、試着体験のデジタル化だ。メガネ店の例として「顔写真をアップするとその顔に合うフレームをAIが事前に選んでくれ、試着している自分の様子を確認したうえで店舗を予約できるようになる」というデモを紹介した。また友人同士のトークルームでの日程調整については「今年中に実現できるのではないか」と述べた。
石川が「実はAgent iの肝はそこではないか。他社にはなかなかできないポイントだ」と指摘すると、葭沢氏は「おっしゃる通りだと私たちも思っている。LINEとオフィシャルアカウントで多くのユーザー接点を持っている弊社がまさに実現したいところであり、Agent iの最大の特徴にしていきたい」と同意した。
LINEヤフー統合の「シナジー」がようやく具現化
LINEとヤフーの統合から数年が経過するなかで、「なかなか一体化されたサービスが生まれてきている感じはしなかった」という石川の率直な指摘に対し、葭沢氏は「弊社の中でも、まさにそう実感している社員も多い」と正直に認めた。そのうえで「これまではLINEとYahooが一緒になってどのようなシナジーを起こせるか試行錯誤してきたが、Agent iがLINEとYahoo両者のシナジーを最も加速させてくれるサービスになっていくのではないか」と述べた。
プライバシーへの懸念については、ユーザーの同意を前提とした情報活用を徹底する方針を示した。過去の情報管理トラブルに言及したうえで「そうした経験があるからこそ、特にAIにおけるユーザーの個人情報や重要な情報の取り扱いに関して、安心・安全にご利用いただけるサービスにしっかりと仕上げてまいりたい」と述べた。
既存のネットビジネスモデルへの影響は「避けられない」
便利になるほどユーザーがYahoo!のページを直接訪れなくなる「ゼロクリック問題」について問われると、葭沢氏は「従来のような使われ方はしなくなる」と正直に認めた。「これまでの検索1クエリや1ページビューが、1AIセッションに置き換わっていき、さらに加速して増えていくのではないか」との見通しを示す一方、メディアパートナーへの配慮としてAgent iの回答に情報ソースを明示する設計を取ると説明した。
広告ビジネスへの影響についても「エージェントの中でのマネタイズを今検証している最中で、新しいビジネスモデルもこの中に作り上げていければ」と述べるにとどめた。石川は「インターネットビジネスがガラガラポンするタイミングかもしれない。提供する側からすると面白いタイミングでもある」と評した。
Agent iは現在、基本機能を無料で提供している。葭沢氏はリスナーへのメッセージとして「これまでAIがちょっと怖いと思われていた方、またエージェントとしてどんなことができるか疑問を感じていた方も、ぜひこれを機会に一度ご利用いただき、今後さまざまな機能をリリースしていくので期待して楽しみにしていただければ」と呼びかけた。
※本記事はポッドキャスト『石川温のスマホNo.1メディア』の内容を再構成したものです。