KDDIデジタルライフ株式会社の濱田達弥代表取締役社長は、6月に開催したpovo2.0のサービス説明会について、他社回線の品質への不満が高まる中で自社のネットワーク品質を訴求する好機だと判断したことを明かした。新規契約者への24時間データ使い放題10回プレゼント、年間1.32TB・3万9,240円の大容量年間トッピング、そして5G SAの夏導入という三本柱で、メイン・サブ両回線でのユーザー拡大を目指す戦略だ。
説明会を6月に開催した狙い――他社品質への不満と夏需要
povo2.0を運営するKDDIデジタルライフが6月に記者・ジャーナリスト向けのサービス説明会を開いた背景には、二つの理由があったと濱田氏は語る。「最近SNSやネット上で、他社をご利用のお客様が回線の品質がよろしくないというお声をたくさん挙げていらっしゃる。駅で使えない、電車に乗っていて使えない、商業施設で使えないといった事実を自社リサーチでも確認したので、我々がお客様を助けるということでサービスをご提供していくタイミングかなと考えました」。
もう一つの理由は季節要因だ。「夏休みだけハードにデータを使いたい若い方、学生が旅行されたり地元にお帰りになったりという時にデータをハードに使いたいという需要が非常に多い。それに先駆けて6月に展開していく」という判断だった。説明会の反響は大きく、説明会後の第3週だけで想定以上の新規ユーザーを獲得したという。
新規向け「24時間10枚つづり」と大容量年間トッピングの設計思想
新規契約者に対し、24時間データ使い放題を10回分プレゼントするキャンペーンは、まず使い勝手を体感してもらうことを狙ったものだ。「他社をご利用されているお客様がいきなりpovo2.0に全部入れ替えるというのはハードルが高い。ポイントプログラムや経済圏の違いでお客様が選ばれている側面もある。とりあえずまずは2枚目として使っていただいて、品質を体感していただく」と濱田氏は意図を説明した。
ところが蓋を開けると、24時間プレゼントを使わずに直接MNPで転入し、有料トッピングを購入するユーザーが「圧倒的に多かった」という予想外の結果が出た。品質への信頼がそのまま即時乗り換えを後押しした格好だ。
一方、新たに設定した年間トッピング(月換算110GB・3,270円、年間1.32TB・3万9,240円)については、他社との差別化ポイントを明確に意識した設計だ。「他社のパッケージに意識しているのは間違いない。ただし違うのは、月ごとにギガバイトが固定されているわけではなく、ある月は10GB、次の月は70GBという可変型で、年間通して1.32TBを使い切れる点だ」と濱田氏は強調した。一括払いに抵抗感があるユーザーに向けては、Paidyによる12回分割払いも用意しており、実質的な月額負担に平準化できる。
ミニマムユーザーを取り込む月600円・0.5GBサブスクトッピング
大容量とは対極に位置する、月600円で0.5GBのサブスクリプション型トッピングも同時に発表された。「ご家庭でお子様がいて、基本的にはWi-Fiにして外では使わないでと言いつつも、何かあった時のために0.5GBほしいというニーズがある。またご高齢の方や、他社をメインに使っていてバックアップ用に0.5GBを入れておきたいというお客様の利用が非常に多い」と濱田氏は説明した。
さらに「ローソンに行けば毎月1GBが追加でもらえるので、0.5GBで十分という若い方もいる」という声もあったといい、0.5GBという単位の設定にはリアルな利用実態の調査が反映されている。試験的な位置づけで市場の反応を見ながら展開を検討していく方針だ。
ローソン・駅との連携「オアシス」とJR東日本との協業
povo2.0独自の施策として定着しつつある「オアシス」は、ローソンや駅のチェックイン等でデータ(0.1GB)を獲得できる仕組みだ。「ローソンにお客さんは毎日のように行かれる。通信も常につながっていることが前提で、生活のルーティーンの中にデータ獲得の機会を置く」というコンセプトだという。
JR東日本とはすでにインバウンド向けにSuicaと連動した実証を新幹線の駅で展開しており、これを一般ユーザー向けにも拡張する協議が進んでいることも明かされた。こうした外部パートナーとの連携が広がる背景として濱田氏は「povo2.0のビジネスオペレーション用のシステムはauとは別に独自で構築している。このシステムがフレキシブルで適応性が高く、パートナー企業がシステム連携しやすい」と説明した。
5G SAを夏に投入、ベトナムへの海外展開も進行中
品質面での次なる強化策として、5G SA(スタンドアローン)の夏季投入が明らかになった。「試験環境でのテストは完了し、技術的なセットアップも終わっている。社内テスト端末では5G SAが使える状態だが、一般商用化のための認可待ちという段階まで来ている」と濱田氏は述べた。承認が下りれば、auネットワークと同等の品質がさらに引き上げられることになる。
海外展開では、今年3月にベトナムの国営通信会社VNPTとの契約を締結し、povo2.0の兄弟ブランドとなるサービスの立ち上げが進んでいる。ベトナムはプリペイドマーケットであることからpovo2.0のモデルと親和性が高く、VNPTが期待しているのは単なるプリペイド通信ではなく、オアシスのような外部パートナーとのエコシステム構築やSDKを活用した新しいビジネスモデルだという。「日本と全く逆の形をした人口ピラミッド構造で、若年層の人口が非常に大きい国。加速的にスマートフォンやデータ利用が伸びる」と濱田氏は市場の可能性を語った。今後も他国への展開を狙っているとしながら、具体的な国名については「まだ申し上げられない」と述べるにとどめた。
将来像についても濱田氏は言及した。「AIコンシェルジュをリリースしていき、お客様向けにこういうパッケージもある、こういう使い方がいいよと提案できるようにしたい。さらに、例えば電車の定期券にpovo2.0が1ヶ月分一緒についていたら面白くないかといった、他業種とのバンドリングをどんどん提案型で作っていきたい」と抱負を語った。ハイパーパーソナライゼーションとビジネスエンパワーメントという二つのキーワードのもと、通信の枠を超えたサービス展開が加速しそうだ。
※本記事はポッドキャスト『石川温のスマホNo.1メディア』の内容を再構成したものです。