7月18日発行のメルマガ「スマホ業界新聞」より転載。「スマホ業界新聞」はその週に行ったスマホ業界の話題を独自の視点で斬るコラムを毎週土曜日に3本、お届けするメルマガです。
ICT総研が日本と海外におけるスマホの通信料金と品質に関する調査、比較の結果を発表した。これが業界関係者から好評だ。
調査対象となるのは、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国の6カ国、25の事業者だ。
結果を見ると、日本の料金水準は欧州よりも高いものの、アメリカや韓国に比べると安い中位レベルに当たるという。
特に注目すべきは品質面、4G接続率とダウンロード速度だ。
日本の場合、4G接続率で見ると98.5%とトップとなっている。続いて韓国(98.3%)、アメリカ(96.1%)、イギリス(89.2%)、フランス(86.0%)、ドイツ(85.8%)という具合だ。
さらにダウンロード速度で見ると、速い順に韓国(59.0Mbps)、日本(49.3Mbps)、ドイツ(28.7Mbps)、フランス(28.6Mbps)、アメリカ(26.7Mbps)、イギリス(22.9Mbps)という結果だったのだ。
つまり、ドイツやフランス、イギリスは、通信料金は日本に比べて安いものの、接続率や速度などで比べると日本に劣るということだ。
おそらく、ヨーロッパでは、キャリアの数が4社体制というところが多く、料金競争もあって、通信料金は安いのだろう。しかし、電波はオークションだし、料金競争の影響もあって、満足にインフラに投資できていないのかもしれない。つまり、「安かろう、悪かろう」という品質になっているのではないか。
一方、日本では、総務省が「通信料金内外価格差調査」を発表。「日本の通信料金は世界に比べて高め」という結論を導き出し、菅義偉官房長官が「日本の通信料金は世界に比べて高すぎる。値下げできる余地がある」という発言につながるというのがお約束になっている。
日本も楽天モバイルが参入し、料金競争が起きる可能性もあり得る。結果として、ユーザーが負担する通信料金は下がるかもしれない。しかし、その結果、キャリアはインフラ投資を怠るようになり接続率やダウンロード速度が低下するということもあり得るだろう。
しかし、今のネットワーク品質を落としてまでも、通信料金を値下げする必要があるのか。
今の3キャリアは、いずれもネットワーク品質は世界的に比べて、相当、高い。今後「ネットワーク品質はいいけど、それなりの通信料金」というキャリアと「ネットワーク品質はイマイチだけど、結構安い通信料金」というキャリアが出てくると面白い。
とはいえ、高い品質を求める日本人が、「安いのが魅力だけど、ネットワーク品質はイマイチ」というキャリアを選ぶのか、といえば、かなり微妙だろう。
一般人の話を聞くと「格安スマホに興味はあるけど、つながらないようでは困る」という話をよく聞く。
確かに昼間の速度低下は仕方ないとしても、つながる場所においては、MNOと違いはないのだが、そこまで理解はできていない。
日本のユーザーは「安くても高品質」を求めるだけに、フランスやイギリスのように安くても、他社よりもレベルの低いネットワーク品質のキャリアに需要はないのではないだろうか。